著者:荻野 正之介
それは、まだ「フリーWi-Fi」なんて言葉がこの世に影も形もなかった頃の話。私たちのチームは、前代未聞のミッションに挑んでいました。
1. 沈黙の会議室と「2000万円」の呪文
連日の会議、飛び交うアイデア。
レイアウトが固まりつつあったその時、Nマネージャーの冷徹な一言が、高揚した空気を凍らせました。
…で、費用回収は5年だよね。月2000万は売らないと、半年掛けずに垂直立上げしないとだね?
一瞬の沈黙。
計算機を叩く間もなく、マネージャーは追い打ちをかけます。
パソコンのブース、何台作れるの? いくら掛かるの?
私は勢いだけで答えました。
150台いけます! 5000万円です!
今考えれば恐ろしい数字ですが、当時はそれが「未来」へのチケットに見えたのです。
2. 「100メガの壁」に現れた救世主
しかし、現実は非情です。当時はまだ100Mbps回線が主流の時代。システム導入責任者のK氏が、首を横に振りました。
その台数、帯域が足りなすぎてネットすら繋がらないよ
150人が一斉にアクセスすれば、通信速度は砂時計を眺めるレベルまで落ち込む。答えが見つからないまま過ぎた一週間後、K氏が「神の進言」を携えて現れました。
ルーター2台構成
2回線同時運用
これなら負荷を分散できるし、片方が死んでも止まらない(冗長化)。
この設計図は、私たちにとって荒野に現れたオアシスのようでした。
3. セキュリティの壁と「伝説の構成図」
さらに現場からは、今の「ノマドワーク」を先取りするような無茶振りが飛び出します。
お客様の持ち込みノートPCを接続できれば、満足度も上がるし、こっちの投資も抑えられるんじゃね?
K氏は即座に
セキュリティを甘く見るな
と一蹴。しかし、彼は単なる「ノー」で終わらせる男ではありませんでした。
そのまた一週間後、彼は涼しい顔でこう言ったのです。
構成を考え直した。これなら持ち込みも対応できる
外部からの脅威を防ぎつつ、150台の固定パソコンと持ち込みパソコンを共存させる……。
それは、ネットワークエンジニアという職種すら一般的ではなかった時代に、K氏が編み出した「魔法のルーティング」に見えました。
エピローグ:進化のDNA
こうして誕生した150台の大型自遊空間。 当時は「無謀」と言われた月2000万円という高いハードルも、止まることのないネットワークと快適な環境が支えとなり、プロジェクトを存続させる原動力となりました。
あれから時は流れ、回線はギガを越え、Wi-Fiが当たり前の時代へ。しかし、私たちの根底にあるのは、あの時K氏が示した「技術で限界を突破する」という執念。
今日も150台の通信は、当時よりもさらに速く、より快適に、未来へと繋がっています。
次回
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