著者:荻野 正之介
ビジネスの世界では、時として「事実は小説よりも奇なり」な大逆転劇が起こる。
ネットカフェとしては日本最大級の広さを誇る「ビッグボックス高田馬場店(500坪)」。ネットブース、ダーツ、ビリヤード、卓球にカフェテリア……当時の最先端コンテンツをこれでもかと詰め込んでも、まだ床が余っていた。
余ったスペース、どうする?
私たちは、近隣の大学祭に潜入し、24時間ぶっ続けのストリート調査を敢行した結果、弾き出した答えは「麻雀」。部屋数にして27部屋。「日本最大級の麻雀店を作ろう!」と意気揚々と警察署へ営業許可を取りに行ったものの、無情にも却下。
こうして、いわば「消去法」によって、27部屋の巨大カラオケエリア計画が動き出した。
忍び寄る「デスマーチ」の足音
すでにカラオケ店の運営経験があった社内には、「まあ、簡単にできるでしょ」という楽観的な空気が流れていた。しかし、これだけの規模だ。フロントを分け、専用のPOSシステムを組む必要がある。
その開発という重責を背負わされたのは、なんと新入社員のO氏だった。
田中守君さー、カラオケ用のPOS作ってよ。
自遊空間のPOSの仕組み分かってるからできるじゃん?
新人・O氏ですけどー間に合わないかもしれないです
新人の蚊の鳴くような抵抗は、忙殺されるチームの空気に掻き消された。
さらにオープン2ヶ月前、追い打ちをかけるように、
Nマネージャーから
Nマネージャーアルコール飲み放題と
貸し切りコースも追加して
と悪魔の追加オーダーが飛ぶ
新人・O氏できますけどー……(白目)
前代未聞の「店長型デバッグ」
そして迎えたオープン1週間前。
完成したばかりのカラオケ受付カウンターからは、案の定、怒号に近い会話が響いていた。
田中守間に合わないじゃん! なんで言わなかったの!?
新人・O氏聞かれなかったんで。
営業しながらデバッグします。
周囲が「正気か!?」と耳を疑う中、
人手不足に悩んでいたA統括店長だけは大喜び。
A統括店長常時25人でも足りないと思ってたから
助かる!
こうして、前代未聞の「店長兼システムエンジニア」が爆誕した。
新人・O氏いらっしゃいませ! 何名様ですか?
コースはお決まりですか!?
笑顔で接客をこなし、客席への案内が落ち着いた一瞬の隙を突き、カウンターの裏で狂ったようにキーボードを叩いてバグを修正する。
今なら確実に労基署が飛んでくる、ほぼ24時間労働の超絶マルチタスク。
彼は本当に、店長をやりながらプログラムを完成させてしまったのだ。
鋼のメンタルを手に入れた男の、最高の引き際
1ヶ月後。
そこには、体重が5キロ減り、鋭い眼光と「鋼のメンタル」を手に入れたO氏の姿があった。
無事にカラオケPOSシステムを稼働させ、最大の修羅場をくぐり抜けた彼は、お世話になった統括店長と田中氏の前に立ち、元気よくこう告げたという。
O氏(鋼のメンタル)俺、システムエンジニアなんで、店長やめて良いすか?
その場にいた全員が爆笑した。
「もちろんだよ! 店長の才能あったのにもったいない(笑)!」
エピローグ
現場主義が生む最強のUI/UX
開発者が自ら接客したからこそ、現場で本当に使いやすい最強のPOSが生まれた(荒療治にも程があるが)。
新人のポテンシャルを舐めてはいけない
「できますけどー」の裏には、凄まじい底力が眠っていることがある(ただし、無茶振りは計画的に)。
窮地を笑いに変え、圧倒的な現場力で突破した熱いドラマ。
スマートな技術がもてはやされる時代ですが、最後に世界を動かしているのは、いつだってこういう「現場の泥臭い熱量」です。
あなたの会社のシステムも、もしかしたらどこかの誰かが「いらっしゃいませ!」と言いながら直したコードで動いているかもしれない。
次回
第6回:150台のパソコンセキュリティとネットゲームをアップデートを自動にしたい。灼熱地獄のリカバリーソフト導入秘話
テクノロジーの進化と市場環境の激変により、現代のビジネスには、インフラ、セキュリティ、そして現場のDXを統合的に最適化する視点が求められています。私たちは、店舗の省人化・無人化を実現する「Doretoru」から、強固なネットワークを支える「Run-VPN」や「WithSecure」まで、多角的な課題に応えるサイバーテレワークソリューションを提供しています。
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