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【第7回】最終回?(オープン5分前に最高潮に思わず激怒。実装!デバッグ!今お客様いらっしゃっても困るよ!オープン当日直前に叫ぶシステム担当者たち)

著者:荻野 正之介

「うるさい、話しかけるな!」という名の、極上の安心感。

世の中には、聞いて安心する言葉と、聞いて絶望する言葉がある。

通常、オープン30分前の現場で、いつもは寡黙なシステムエンジニアたちから「うるさい!今やってるから話しかけるじゃねえ!」と怒鳴られたら、それは「絶望」のサインだ。しかし、あの時の私は違った。その怒号を聞いた瞬間、体中にじわっと安心感が広がっていくのを感じていた。

荻野正之介

「あ、これ、間に合うわ」と。

思えば、予兆は1週間前のプレオープン日から始まっていた。ブースエリアのスプリンクラーが謎の誤作動を起こし、5部屋が瞬時に水浸し。オープン前にして「まずは水拭きと乾燥」という、予定にない謎の筋トレを強いられた。

迎えた直前期間、オープンブースは「システム準備室」兼「臨時の我が家」と化した。

「日本最大、日本初、そして日本一の店舗を作る」

その野望だけで、全員の脳内麻薬はドバドバと分泌されていた。メインのシステム担当者は2週間も店舗に住み着き、たまに家に「通う」という主客転倒なハードワーク。私も準備室のドア前の床で仮眠を取り、誰かが入退室するたびに「またがれて外出される」という、もはや人間としての尊厳をどこかに置き忘れたような異常なテンションで日々を過ごしていた。

そして、3日前の社内確認会。目の前に並んだのは、あまりにも芸術的な「絶望のフルコース」だった。

入場ゲートがQRレシートで開かない(致命傷)

客席に席番が表示されない(迷子量産)

客席の背もたれがデカすぎて座れない(物理的エラー)

自社開発デジタルビリヤードのボールが割れる(もはや物理破壊)

店内ポスターの納品遅延(彩りの欠如)

ザックリ挙げても、普通なら「すいません、オープン延期します」と土下座するレベルのバグとトラブルのオンパレード。しかし、当時の私たちの辞書に「延期」の文字はなかった。あるのは「やるしかない、やるしかない、やるしかない」という、壊れたテープレコーダーのような精神論だけである。

そして迎えた、グランドオープン当日、30分前。
私は戦闘服(スーツ)に着替え、意を決してシステム室のドアを開けた。

荻野正之介

出来ました? オープンしますよ!

そこで返ってきたのが、冒頭のあの怒号である。

「うるさい!今やってるから話しかけるじゃねえ!」

あの瞬間、私には見えた。彼らの瞳の奥に灯る、戦う職人の炎が。あの一言は、拒絶ではない。「今まさに最後の1ピースをハメ込んでるから、1秒も邪魔するな」という、最高に熱いマニフェストだったのだ。

直後、怒涛のコール&レスポンスが響き渡る。

「デバッグ!!」「ゲート見て!」「ログ見て!」
「デバッグ!!」「全部もう一回確認して!!」

―――そして、奇跡は起きた。

時計の針がオープンを告げると同時に、250人のお客様が次々と入場していく。
ゲートは開き、システムは動き、何事もなかったかのようにスムーズに、日本一の店舗が産声を上げた。

極限状態を生き抜き、目の前に広がる大盛況のフロアを見つめながら、私は言葉では言い表せないほどの達成感に包まれていた。脳内には感動のエンディングテーマが流れていた。

この最高の舞台、最高のチーム、そして日本一のクオリティ。
私は、湧き上がる熱い想いをそのまま口にした。

荻野正之介

なんかデカい自遊空間できちゃった、
もっと進化できそう(笑)

…………………その瞬間、世界から音が消えた。

さっきまで死線を共に潜り抜けてきた仲間たちが、見たこともないような冷ややかな目で、ポカーンとこちらを見ている。全員が綺麗にドン引きしていた。 感動のフィナーレを、あまりにも身も蓋もない一言でブチ壊した自覚はある。しかし、「形あるものは常に変化し、完成はない」という諸行無常の響きが、あの瞬間の私には確かに聞こえたのだ。

日本最大級の店舗の効率化をITで実現せよ
第1期 完


第1期完、本当にありがとうございました。

20年前の現場から始まった「当たり前」の裏側を振り返ってきました。あの頃、セルフ自動釣銭機も、注文管理端末も、清掃解除端末も、快適な通信環境も、最初から完成されていたわけじゃありません。現場の声に押されて、時にはポカーンとされる仲間の顔もありながら(笑)、「やってみるか」の連続で、少しずつ形になっていったものです。

そんな第1期を経て、荻野 正之介のコラム、第2期の連載が決定しました。

「第1期 完」でいったん区切るのもきれいだったのですが、あの頃の話も、今の働き方の話も、まだまだ書きたいことが山ほど残っています。

形あるものは常に変化し、完成はない。店舗も、仕組みも、働き方も、常に次の可能性を含んでいます。
デカい自遊空間ができちゃった、あのときの感覚がずっと本音でした。

そんな余白を抱えたまま、第2期の第1回へ――。

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