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AIは導入したけれど…現場は本当に使いこなせている?|IPA(情報処理推進機構) AIの動作・分析・利用等の説明に関する意識調査 より

こんにちは。ランシステムのヒロ田中です。

みなさん、最近はGeminiやChatGPTをはじめとする生成AIの話題を目にしない日がないくらいになりましたよね。社内でも「議事録作成に使っている」「メール文面を整えるのに便利」「調べものの下書きに活用している」といった声を聞く機会がずいぶん増えてきました。

一方で、経営者や管理部門の方とお話ししていると、こんな悩みもよく耳にします。

  • 「アカウントは用意したけれど、思ったほど使われていない」
  • 「一部の社員だけが使っていて、全社的な活用には広がっていない」
  • 「結局、本当に生産性が上がっているのか分からない」

これ、決して珍しい話ではありません。

先日、IPA(情報処理推進機構)が公開した「AIの動作・分析・利用等の説明に関する意識調査」を読んでいて、まさにこの現場感に重なる結果が出ていました。今回はその調査結果をもとに、AIを導入した後の職場で何が起きているのか、そして経営層としてどこに目を向けるべきなのかを、少し現場目線でお話ししたいと思います。

目次

AIは普及した…でも、使いこなせているかは別の話

まず注目したいのが、生成AIの利用状況です。調査によると、生成AIは企業規模や業種を問わず広く使われており、利用率は95%に達しています。ここだけを見ると、「もうAIはすっかり当たり前になったんだな」と感じる方も多いかもしれません。

しかし、もう少し中身を見ていくと、少し違った景色が見えてきます。業務でAIを利用している人のうち、70%以上がAI経験3年未満であり、さらに2025年以降に利用を始めた人だけでも34.8%を占めているのです。つまり、職場の中には「AIを使ったことがある人」は確かに増えています。
しかし同時に、「使い始めてまだ間もない人」も非常に多いということです。

これは、自動車免許を取ったばかりのドライバーがたくさんいる状態に近いかもしれません。運転はできる。でも、高速道路や雨の日の運転、長距離移動にはまだ不安がある。生成AIも同じで、画面に質問を入力すること自体は簡単です。しかし、業務で安全に、効果的に、継続して使いこなすとなると、やはり一定の知識と経験が必要になります。

だからこそ、経営層としては「AIを導入したから終わり」ではなく、「現場が本当に使いこなせる状態になっているのか」を見ていく必要があります。ここを見落としてしまうと、せっかく導入したAIが、一部の人だけが使う便利ツールで終わってしまうのです。

現場が困っているのはやる気の問題ではありません

では、実際に現場は何に困っているのでしょうか。今回の調査で特に印象的だったのは、職場におけるAI利用の課題として「職場全体で利用知識・スキルが足りない」が54.4%、「職場全体で利用知識・スキルの情報がない、または少ない」が54.9%に上っている点です。

つまり、多くの現場では「AIを使うな」と言われているわけではありません。むしろ、使えるなら使いたいと思っている人も多いはずです。しかし、「どの業務に使えばよいのか」「どこまでAIに任せてよいのか」「出てきた回答をそのまま使ってよいのか」が分からない。ここで立ち止まってしまっているのです。

実際、現場でよく聞くのもこのあたりの声です。「メールの下書きには使えるけれど、社外向けの資料に使っていいのか不安」「調べものには便利だけれど、内容が正しいか判断できない」「社内情報を入れてしまってよいのか分からない」。こうした迷いがある状態では、AI活用が広がらないのも当然です。

新しい業務システムを導入したとき、マニュアルも研修もなしに「今日から自由に使ってください」と言われたら、現場は困りますよね。AIも同じです。便利なツールだからこそ、使い方の土台を整えなければ、現場任せではなかなか定着しません。

情報漏えいへの不安はむしろ自然な反応

もう一つ、見逃せないのがセキュリティに関する不安です。調査では、「情報漏えいがおこる(不適切なプロンプト入力等)」ことへの不安を感じる人が79.1%に上っています。約8割ですから、かなり高い数字です。

ただ、これは決して悪いことではないと思います。顧客情報、契約情報、社内の営業情報、開発中の資料などを扱う企業であれば、「この内容をAIに入力しても大丈夫なのか」と不安になるのは当然です。むしろ、その感覚がないまま何でも入力してしまうほうが危険です。

問題は、その不安を解消するためのルールや相談先がないことです。ルールが曖昧な職場では、慎重な人ほどAIを使わなくなります。一方で、リスクをあまり意識していない人は、便利だからという理由で機密性の高い情報を入力してしまうかもしれません。どちらも、企業にとって望ましい状態ではありません。

AI活用を進めるうえで大事なのは、「使うな」と止めることでも、「好きに使っていい」と丸投げすることでもありません。どんな情報は入力してよいのか、どんな業務では確認が必要なのか、出力結果をどうチェックするのか。こうした基本的なルールを整え、安心して使える環境を作ることが重要なのです。

現場が求めているのは難しい技術論か?

AI活用というと、どうしても「機械学習」「アルゴリズム」「プロンプトエンジニアリング」といった難しい言葉を思い浮かべる方もいるかもしれません。もちろん専門的な理解が必要な場面もありますが、今回の調査を見る限り、現場がまず求めているものはもっと身近な情報です。

利用者が最も参照したい情報の1位は、「AIの基本知識(AIにできること、利用場面など)」でした。回答割合は79.5%。さらに、76.0%の人がこうした基本知識を理解することが重要だと考えています。

つまり現場が知りたいのは、最新の技術論文ではありません。難しい仕組みの説明でもありません。「AIは何が得意なのか」「どんな業務に使えるのか」「どんな使い方をすると危ないのか」「出てきた答えをどう確認すればよいのか」。まずはそこなのです。

ここは経営層にとっても大切なポイントです。AI活用が進まない理由を「社員の意識が低いから」「新しいものに抵抗があるから」と決めつけてしまうと、本質を見誤ります。必要なのは、いきなり意識改革を叫ぶことではなく、まずは基本を学べる環境を用意することです。現場が安心して一歩目を踏み出せる状態を作ることが、結果的に活用の広がりにつながります。

中小企業こそAIを「学べる環境」が武器になる!

今回の調査では、大企業と比べて中小企業の一部では、AIの基本知識やセキュリティ情報の重要性に対する認識が相対的に低い傾向も見られました。これは少し気になる点です。

人手不足や業務効率化の課題を抱える中小企業にとって、AIは大きな可能性を持っています。資料作成、問い合わせ対応、情報整理、マニュアル作成、社内ナレッジの共有など、使い方次第では日々の業務をかなり助けてくれる存在になるはずです。しかし、その可能性を活かすには、「とりあえず使ってみて」で終わらせないことが大切です。

まずは、AIで何ができるのかを共有する。実際に使えた事例を社内で紹介する。入力してはいけない情報のルールを決める。不安や疑問を相談できる場を作る。こうした土台づくりは、決して大がかりなシステム投資でなくても始められます。小さな社内勉強会でもよいですし、部署ごとに活用例を持ち寄るだけでも十分な第一歩になります。

AIは、導入した瞬間に成果が出る魔法のツールではありません。しかし、現場が学びながら使える環境を整えれば、少しずつ業務の中に根づいていきます。そしてその積み重ねが、企業全体の生産性や対応力を底上げしていくのです。

AI導入の次に必要なのは現場に寄り添った運用

いかがでしたでしょうか。今回のIPAの調査から見えてくるのは、生成AIがすでに多くの企業に広がっている一方で、現場ではまだ知識不足や情報不足、セキュリティへの不安が残っているという現実です。

AI活用の課題は、必ずしもツールの性能だけではありません。むしろ、「どう使えばよいか分からない」「どこまで使ってよいか判断できない」という状態を放置してしまうことのほうが、大きな壁になります。

経営層に求められるのは、最新のAI技術を追いかけ続けることだけではありません。社員が安心して学び、相談し、業務の中で無理なく活用できる環境を整えることです。AIを導入する時代から、AIを活用する時代へ。その第一歩は、意外にも「基本をきちんと共有すること」なのかもしれません。

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